ランナーの中で「膝の外側が痛む」と訴える人の多くが経験しているのが「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」です。
特にマラソンや長距離走のように繰り返し膝を酷使するスポーツでは、発症リスクが高まります。
初期は違和感程度の軽い痛みでも、放置すれば深刻な炎症を引き起こし、走ること自体が困難になるケースも少なくありません。
この記事では、腸脛靭帯炎の基本的な知識から、発症の原因、症状、そして予防・改善のために知っておくべきポイントまで、わかりやすく解説します。走ることを楽しみ続けるために、正しい知識を身につけましょう。
ランナーに多い「腸脛靭帯炎」とは?
腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)は、ランナーに多くみられる膝の外側の痛みを主訴とするスポーツ障害です。腸脛靭帯は大腿骨の外側から膝の外側にかけて走行する、強靭な線維性の組織です。ランニングなどの繰り返しの動作によって、この腸脛靭帯が大腿骨外側上顆(だいたいこつがいそくじょうか)と摩擦を起こし、炎症を引き起こすことで痛みが発生します。特にマラソンや長距離走などの練習量が多いランナーに多く発症する傾向があります。
1. 腸脛靭帯炎の症状
腸脛靭帯炎の主な症状は、膝の外側に発生する痛みです。初期段階では、ランニング開始時に軽い痛みを感じる程度ですが、徐々に痛みが強くなり、ランニングを続けることが困難になる場合もあります。また、階段の上り下りや、椅子から立ち上がる際にも痛みを感じることがあります。安静にしていると痛みは軽減しますが、運動を再開すると再び痛みが出現するのが特徴です。症状が悪化すると、膝の曲げ伸ばしが困難になることもあります。痛みの程度は人によって異なり、鈍痛や鋭い痛み、灼熱感など様々です。
2. 腸脛靭帯炎になりやすい人の特徴
腸脛靭帯炎になりやすい人の特徴としては、以下のようなものが挙げられます。
特徴 | 詳細 |
---|---|
オーバーユース | 急に練習量を増やしたり、長距離を走りすぎたりすることで発症リスクが高まります。 |
ランニングフォームの乱れ | 過回内(オーバープロネーション)や、膝が内側に入るなど、フォームの乱れは腸脛靭帯への負担を増大させます。 |
股関節の柔軟性低下 | 股関節の柔軟性が低いと、腸脛靭帯が引っ張られやすくなり、炎症を起こしやすくなります。 |
筋力不足 | 特に中殿筋や大腿筋膜張筋などの筋力が弱いと、股関節の安定性が低下し、腸脛靭帯への負担が増加します。 |
O脚 | O脚の人は、膝の外側に負担がかかりやすく、腸脛靭帯炎になりやすい傾向があります。 |
不適切なシューズ | クッション性の低いシューズや、足に合っていないシューズを使用していると、腸脛靭帯への負担が増加します。 |
これらの要因が複数重なることで、腸脛靭帯炎を発症するリスクがさらに高まります。思い当たる点がある場合は、早めに対策を講じることが重要です。
ランナーに多い「腸脛靭帯炎」の3つの原因
腸脛靭帯炎は、ランナーによく見られる膝の外側の痛みですが、その原因は一つではありません。ここでは、主な3つの原因を解説します。
1. オーバーユース(使いすぎ)
腸脛靭帯炎の最も一般的な原因は、オーバーユース(使いすぎ)です。長距離走やスピード練習など、膝への負担が大きいトレーニングを繰り返すことで、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が摩擦を繰り返して炎症を起こします。特に、走行距離や練習強度を急に上げた場合に発症しやすいため、注意が必要です。適切な休息とトレーニング量の調整が重要です。
2. ランニングフォームの乱れ
ランニングフォームの乱れも、腸脛靭帯炎を引き起こす大きな要因です。例えば、過回内(オーバープロネーション)は、着地の際に足首が内側に過剰に倒れ込むことで、膝にねじれのストレスがかかり、腸脛靭帯を引っ張る原因となります。また、ストライドが大きすぎる場合や、脚を前に振り出す際に膝が内側に入ってしまうなども、腸脛靭帯への負担を増大させます。正しいランニングフォームを身につけることが、腸脛靭帯炎の予防・改善に繋がります。
3. 股関節・骨盤の歪み
股関節や骨盤の歪みも、腸脛靭帯炎の原因となります。骨盤が前傾したり後傾したりすることで、股関節の動きが制限され、腸脛靭帯への負担が増加します。また、股関節周囲の筋肉の柔軟性低下や筋力不足も、歪みに繋がることがあります。例えば、中殿筋の筋力低下は、ランニング中に骨盤を安定させることができず、腸脛靭帯へのストレスを増大させる可能性があります。股関節や骨盤の歪みを整え、周囲の筋肉を強化することで、腸脛靭帯炎の予防・改善に繋がります。
4. その他「腸脛靭帯炎」の原因
上記以外にも、腸脛靭帯炎の原因となる要素はいくつかあります。以下にまとめました。
要因 | 詳細 |
---|---|
シューズの問題 | 自分に合っていないシューズを使用していると、足や脚への負担が増加し、腸脛靭帯炎のリスクを高めます。特に、クッション性が低いシューズや、サイズが合っていないシューズは注意が必要です。自分の足型やランニングスタイルに合ったシューズを選ぶことが大切です。 |
ストレッチ不足 | ストレッチ不足は、筋肉の柔軟性を低下させ、関節の可動域を狭めます。これにより、腸脛靭帯への負担が増加し、炎症を起こしやすくなります。ランニング前後のストレッチはもちろんのこと、日頃から柔軟性を高めるためのストレッチを行うことが重要です。 |
筋力不足 | 筋力不足、特に股関節周囲や体幹の筋力が不足していると、ランニングフォームが乱れやすく、腸脛靭帯への負担が増加します。股関節外転筋群(中殿筋、小殿筋)や体幹の筋肉を強化することで、ランニングフォームを安定させ、腸脛靭帯炎を予防することができます。 |
これらの要因が複合的に絡み合って腸脛靭帯炎を発症することが多いため、一つ一つ丁寧に見ていく必要があります。
ランナーに多い「腸脛靭帯炎」とは? | まとめ
腸脛靭帯炎は、ランニングによるオーバーユースやフォームの乱れ、筋力や柔軟性の低下など、さまざまな要因が重なって発症するスポーツ障害です。
軽度のうちに適切な対処を行えば、悪化を防ぎ、再発のリスクも抑えることができます。
日頃から股関節の柔軟性や筋力を高め、正しいフォームで走ることが予防の鍵となります。
痛みを我慢せず、必要に応じて専門家の指導を受けながら、自分の身体と上手に向き合いましょう。